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堺ヘリ墜落事故 事故報告書公開 [航空機事故]

堺市でロビンソンR22が線路上に墜落して乗員二人が死亡した事故がありました。
だいぶ前のことですが、事故報告書が公表されました。ヤフーのトップページに載っていたので、そのことについて書いてみます。

事故報告書自体はこちらから検索してください。
http://www.mlit.go.jp/araic/aircraft/kensaku/

この事故は航空機事故としては非常に小規模です。しかも一般の人が移動手段としての乗る確率はほぼない機体でありながら、1年半経った時期にヤフーに掲載されるというのが驚きです。
一般人への危険度でいうと、自動車事故にあう確率のほうがはるかに高い(死亡数ではケタが1桁か2桁違う。ケガならさらに違う)わけですが、それでもこれだけ注目されるということ自体に興味をひかれます。

事故報告書や報道について思ったことをつらつら書いていきます。以下はあくまで私見です。
まず、亡くなられた方の冥福をお祈りいたします。ただし、いくら祈っても亡くなった方が生き返るわけではないので、事故を徹底的に分析して同じ事故を起こさないようにするのが大事でしょう。


毎日新聞の記事を引用します。引用部分は太字で書きます。

<堺・ヘリ墜落>機長席に無資格客、急操作で翼傾く…安全委 1月30日11時10分配信 毎日新聞  堺市で07年10月、南海高野線線路上に「大阪航空」(大阪府八尾市)の小型ヘリコプターが墜落して2人が死亡した事故で、運輸安全委員会は30日、事故報告書を公表した。会社側の指示で、男性操縦士(当時40歳)が無資格の乗客の男性(当時44歳)を機長席に座らせ、操縦させて操作を誤った可能性があると結論付けた。

機長席(右)に素人を座らせたというのがよくわかりません。そうする理由が何かあったのでしょうか。事故報告書にも書いてありますが、左席には無線の周波数切り替えボタンがないはずです。(私はこの事故機で飛んだことがあります。たしかにそうだった気がします。)

 報告書や安全委によると、小型ヘリは後方からの強風にあおられ、急激に操縦かんを動かす機体操作を行ったため、主回転翼(メーン・ローター・ブレード)が限界を超えて傾き、翼が機体尾部(テール・コーン)にぶつかる「マスト・バンピング」が発生したのが墜落原因とした。翼の回転が弱まって失速した可能性が高いという。機長は当時無線機の操作をしていてすぐに操縦を代わることができなかった可能性がある。

ここの記事は不正確です。マストバンピングとテールコーンとローターの接触は同じではありません。マストバンピングはmast(柱)にbump(ぶつかる)ことを言うだけであり、テールコーンへの接触はTailcorn hitというそのままの言葉で表記されます。同時に起こることも多いですが、同じことを言っているわけではないです。この書き方からは、「過剰な操縦操作」 から 「テールコーンヒット」が直接起こったように読めます。ここは非常に重要なので後で触れます。

失速したのは「ローター」ということを意識して書いているのかきわめて疑問です。「失速」という言葉は定義されており、「速度を失う」のが失速ではありません。「失速」(Stall)というのは「迎え角を増やしても揚力が低下する」ことであり、要するに境界層の剥離のことです。

RPMが保たれており、推力が十分に出ている状態ならそう簡単にはテールコーンヒットは起こらないはずです。ただ、コレクティブを急に下げたり、急な吹き降ろしでLowG(=ローターの発生推力が低下状態)になると簡単にローターが傾きます。シーソーローターであるヒューイ(UH-1)やR22の弱点です。
ちなみに全関節型や無関節型(リジッド)ではこの問題は起こりにくいです。ヒンジオフセットがあり推力が無くてもローターの傾きを機体に伝達できるため。特にマストバンピングは構造的に起こりません。


事故後、機長は視力低下や呼吸困難を引き起こす可能性がある「サルコイドーシス」を患っていたことが分かったが、事故との因果関係は不明。操縦資格の要件となる航空身体検査基準に不適合な病気だが、通常の検査項目で異常が出なかったことから、医師は操縦に必要な航空身体検査証明を出していた。しかし、報告書は、安全確保の観点から、通常以外の検査も必要だったと指摘した。【窪田弘由記】
ここについて制度の問題ですのでコメントしません。



ここからは事故報告書を読んで感じたことについてコメントしてみます。

事故報告書によると、おそらく事故機は体験搭乗の客が機長席に乗って操縦しており、パイロットが修正していたようですね。事故直前の飛行は安定しておらず、速度、高度、方位とも激しく変動していたようです。
事故の時には強いテールウインドが吹いていたそうです。
また、事故機はテールコーンヒットを起こし、メインローターが停止した状態で墜落したようです。

「原因」のところを引用します。
本事故は、同機の飛行中にマスト・バンピングが発生し、メイン・ローター・ブ レードがテール・コーンを叩き、メイン・ローターの回転が低下したため、機体が 操縦不能状態となり、墜落したことによるものと考えられる。 マスト・バンピングが発生したことについては、体験飛行中に後方からの強い突 風を受けた際、右席に着座した無資格の同乗者が本件機長による機体の回復操作を困 難とする急激な操縦操作を行ったことが関与した可能性が考えられる。

この原因というのが正直いってよくわかりません。もちろん事故後の調査ですから限界があるのは理解しています。
墜落の直接の原因がテールコーンヒット(あるいはマストバンピング)であることは間違いなさそうです。しかし、さらにその原因については、根本的な疑問があります。

1.マストバンピングが起こった原因はなにか?
RPMが保たれていて、かつメインローターの推力が十分ある状態でもマストバンピングはおこるものなのか?
つまり、単なるオーバーコントロールだけでも起こりうるのか?(オーバーコントロールはおそらくあったでしょう。初めて操縦すると必ずそうなりますから)
またテールウインドとの関係は? 「急激な操縦操作を行ったことが関与した可能性」と書いてありますが、具体的にはどんな操作が考えられるのでしょうか。
低速飛行中に強いテールウインドの突風を受けた状態でめいっぱいアフトサイクリックを当てる、ということなのでしょうか。

2.マストバンピング、テールコーンヒットの因果関係
これらは順番に原因と結果なのか?
この書き方だと原因と結果と受け取らざるを得ない文章です。
マストバンピングが起こったのは確か(ティーターストップやドループストップの破損があり、マストの損傷もある)ですが、それがテールコーンヒットの原因といえるのでしょうか。同じ原因で起こった結果を違う角度から見ているだけに思えます。


3.回転数低下の原因
RPM低下はテールコーンヒットだけのためか。
これは1や2とも関連するのですが、テールコーンヒットがなければRPM低下は起こらなかったのか?あるいはそれと関係なくRPMが低下していたのか?




詳細な事故報告書でわかりやすいのですが、以上のような根本的な疑問点があり、結局パイロットはどうしたらよいのかがよくわかりません。もちろん、「素人には触らせるな」ということなのでしょうが、そういう原則論ではなくもっと根本的な原因を知りたいですね。

どなたか詳しい方がおられたらぜひ教えてください。また間違いがあればぜひ指摘してください。
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