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「エベレスト・レスキュー」 [ヘリコプター]

ブログタイトルが「ヘリコプターを飛ばす」ではあるものの、ほとんどヘリコプターの記事を書いていません。しかし、ヘリコプターへの愛が冷めたわけではありません。
最近スカパーを見ていると、「エベレスト・レスキュー」という番組をやっていました。要するに、エベレスト付近で調子が悪くなった人をヘリで救出する番組です。

ヘリがいかに天候および高高度に弱いかというのが、画面からにじみ出ている稀有な番組と思います。また、高山病について勉強したい人にも最適な番組です・・。

ヘリの極限運用を知るにはいい番組だと思うので、紹介してみます。



航空機(特にヘリ)にとって「余剰パワー」は生命線です。余剰パワーがなければホバリングができません。つまり離陸できません。しかし、実はホバリングはかなりパワーを使用します。

Helicopter Flying Handbook (FAA)より
required_power.JPG
具体的な機種は不明ですが、速度と必要パワーの一覧です。青い線が必要パワーです。横軸は速度です。速度ゼロから加速していくと、徐々に必要パワーが減少するのが特徴です。ここが航空機と自動車の大きな違いです。ゆっくり飛ぶにはパワーがたくさんいるのです。
自動車は車体は地球が勝手に支えてくれるため、回転体のフリクションはあるものの高速域での必要パワーは空気抵抗が支配的となります。しかし、航空機は自分自身を空気で支えることが必要であり、そのため低速域では誘導抗力が大きくなります。(詳細は省略します。)もちろん高速域では空気抵抗が多くなり、速いほどパワーが必要という当たり前の状況となります。そして、必要パワーがエンジンパワーと等しくなるところが最高速度ということになります。

要するに「ホバリング(ゼロスピード)はパワーがいる。」のです。さらに、高高度(正確には高密度高度、空気密度が低い)では、出せるパワーが下がります。だから、高高度でのホバリングが困難なわけです。

上記の理由で、機体重量と温度からホバリングができる高度が決まってきます。ということで、ホバリング限界高度 あるいは ホバリング限界重量のチャートを載せてみます。

RobinsonR22 ホバリング高度表(地面効果外)
OGE_hover.JPG

やや見にくいチャートですがご了承ください。ロビンソンがWEBに公開しているマニュアルからの引用です。
たとえば重量が1370ポンド(625kg,最大重量)で温度が+30度だった場合、ホバリング限界高度はたったの3000ftになります。要するに900m位です。9000mの間違いではありません。
たとえばパイロットが70kg、乗客が70kgだとします。燃料満タンで70kgですので、自重が400kgあることから、ほとんど最大重量に近い値になります。ただしこれは地面効果外のチャートであるため、地面効果内ではもう少し余剰パワーはあります。
それではこのようにパワーに余裕がない状態で離陸せざるを得ない場合にどうするかというと、燃料を減らすか、ランニング・テイクオフをするしかありません。
燃料を減らすというのは、文字通り燃料を満タンにせず離陸します。そして低い高度の空港で再給油です。また、飛んでいれば燃料を消費しますので、自然と軽くなるため着陸はラクになるという要素もあります。
ランニングテイクオフというのは、スキッドをこすりながら地面を滑走して離陸する方法です。加速すれば必要パワーが減りますので、そのうち浮きます。ただし、途中でスキッドがなにかに引っかかると、ダイナミックロールオーバーで一瞬で転ぶため、基本的には避けるべきマニューバーです。
これは車輪式のヘリでは特別な方法ではありませんが、小型ヘリは一般にスキッドですので通常のやり方ではありません。

なお、余談ではありますが、水蒸気は大気より密度が低いため(間違いではありません)、高湿度では空気密度が下がります。ということで、高度が高く、気温が高く、湿度が高いほど空気密度が下がります。つまり厳しい条件ということになります。
車に乗っている感覚だと、ここまで空気密度にこだわるのは理解しにくいと思いますが、繰り返しますが航空機にとって極めて重要なことです。



ということで、ヒマラヤのような高高度オペレーションでは、高高度に特化したハイパワーヘリが必要となります。古いところではSA315Bラマであり、最近ではAS350 3エキュレイユなどになります。

SA315B ラマ
https://ja.wikipedia.org/wiki/SA_315_(%E8%88%AA%E7%A9%BA%E6%A9%9F)

AS350 エキュレイユ
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%A6%E3%83%BC%E3%83%AD%E3%82%B3%E3%83%97%E3%82%BF%E3%83%BC_%E3%82%A8%E3%82%AD%E3%83%A5%E3%83%AC%E3%82%A4%E3%83%A6

延々とここまでヘリのことを書いてきましたが、この番組に出てくる機体はAS350B3が多いです。この機体は高高度性能を狙った機体であり、エンジンを強化したハイパワーバージョンになります。

ちなみに、この番組はエベレストですのでネパールの機体が出てきます。ネパールに関してはAS350B3が非常に多いのが特徴のようです。通常の高度だとB3は過剰な性能ですが、やはりネパールのような高高度オペレーションには必要なのでしょう。

ネパールのヘリ一覧 民間機 (2017/7)
nepal.JPG

http://www.rotorspot.nl/ より



この番組では、高高度のため重量制限で離陸できないとか、酸素供給が必要であるとか、また風や天気で離陸できないなどということが頻発します。どれだけ気を使っているかというのが画面から伝わってきます。その気持ちが痛いほどわかります。

また、この番組では高山病や低体温や凍傷でよく死者が出ています。まあ、死んだとしても遺体が回収できるだけマシなのかもしれません。デスゾーンの遺体は永遠に放置されることが多いようですので。

ちなみに、世界一危険な空港と認定された?テムジン・ヒラリー空港(旧ルクラ空港)の話も出てきます。ルクラもめちゃくちゃな空港と思いましたが、この番組を見るとまだマトモなほうなのかと思ってしまいます。

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%86%E3%83%B3%E3%82%B8%E3%83%B3%E3%83%BB%E3%83%92%E3%83%A9%E3%83%AA%E3%83%BC%E7%A9%BA%E6%B8%AF
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